2019-7-11
- なんて日だ!
誰もが休みは楽しみにしているものである
僕もその一人だ
今年は梅雨時期らしい日が続き、天気予報もころころと情報を変えていく
そんな天気の中でも、どうにか山に行こうと曇り予報ではあったが、今年こそはと考えていた尾根があったので、あまり気が乗る天気ではなかったが日曜の晩、雨と靄がすごい中、車を出して山梨に向かった。
するとどうだ。出発して10分くらいの山越えカーブで対向車のヘッドライトにやられてハンドルを切ってしまったが為に、
「ガガガー」!
信じられない程サイドを擦ってしまったではないか!完全に出鼻を挫かれたような出来事だった。
道中ガソリンスタンドで、給油しながら傷を見る。
人生で一番の傷だった。
一緒に旅した数だけ傷ができる。
そう言い聞かせて車を進ませた。
山梨は南アルプス、深夜2時に芦安駐車場につくと靄っているものの雨は降っていない。
朝5時。起きると雲間から青空がのぞく。
山の上は雲の上という言葉を期待し、7時のバスで北沢峠を目指す。
おぉ、山の稜線が全く見えないどころか、道路の視界も悪いじゃないか。
兎角来てしまった以上はやってやろうじゃないか。今日の目的は『南アルプス北東部の稜線 早川尾根』だ。
宇多田ヒカルの天然水のCMロケ地、栗沢山からスタート。
展望どころか、森以降の景色が一切見えない尾根を淡々と登る。
なんとなく宇多田ヒカルの歌も歌ってみる。
ひらけた稜線まででると一瞬、風が雲を流してくれた。
これから行く尾根は厳しそうだ。登山地図には登り2時間と書いてあるが、先週ものぼって脚力がついてあるからもっと早いんじゃないかと思ったが、着いたら2時間半かかってしまった。
なんだ私はポンコツだったのか。
その後も ガスまみれの稜線を歩くが、大嫌いなハイマツ漕ぎがやってきた。
顔までかかるハイマツ、それに付いた小虫がバンバンたかってくる。ハイマツの変な油も付いてくる。
そんなハイマツを避けるよう歩きやすいところを進んでいたらルートを間違えてしまい、背丈を越すハイマツ群をダイブして渡るハメになってしまった。
ハイマツの枝に足を絡まれて、ひとり山の上でもがいている自分が情けなかった。
1時間半かかって次のポイント、アサヨ峰に着く。ココは行きは2時間だった気がするなと地図をチェックしたら、行きは1時間だった。
そうだ。わたしはポンコツだったのだ。
これ以降自分はポンコツだという事を言い聞かせて謙虚に登る事にした。次のポイント、早川尾根小屋までは3時間だ。5時間かかるくらいの気持ちでいよう。
途中樹林帯に入ると地図に書いてある。あるところまで来ると樹林帯に入る下りがあった。
少し降りてみると岩盤や小石がザレてとても歩きずらい。
しかし、足跡が何箇所かついているので進んでみると到底下れるところではないと思い,コンパスを出してみるとルートと違う方角を指していた。
この稜線から西に下る事はないなと思いながらも踏み跡を信じて下ってしまったが、登り返して見渡すと藪に隠れた道があった。だんだんと怒りがこみ上げてきた。ポンコツな自分にではなく、『静かな雲上歩き、南アルプスの自然を楽しめる最高の展望ルート』と書いた雑誌に対してだ。
静かって、静か過ぎんだよ!ひとっこひとりあってねーわ!鹿も猿見てねーわ!
小鳥がピヨピヨって求めてねーわ!
ひとり熊鈴チリンチリン…って
クソピークス!!
そこから樹林帯と稜線を行き来するような道に変わり、ガスまみれの道になり鬱蒼としていた。
スタートから7時間。早川尾根小屋に着いた。
まだ歩く体力はあったが、この先暗くなったら困ると思い、小屋の前でテントを張って朝を待った。
今日は鍋を汚さないようにと、カップラーメンを食べて、それを皿に使う事にした。
寝袋に潜り気絶するように眠ってしまったが、目を覚ますとまだ22時だ。テントから外をみると恐ろしいくらい真っ黒だ。
空が抜けている場所ではあったが、濃いガスが空を包んでいて何も見えない。
怖いからもう一度寝る事にしよう。
なんだか怖いからイヤホンを取り出してボサノヴァでも聴きながらねようじゃないか。
朝2時過ぎ。テントを叩く音がする。
雨が降ってきたようだ。
最悪だった。昼過ぎの予報がこんなに前倒しになるなんて。
コレだから山の天気はわからないのだ。しかし、外はまだ暗い、4時まで待とうじゃないか。
だんだんとライトをつけなくてもテント内が見えるようになってきた。
雨は強くなったり弱くなったり。
待機してても拉致があかないので、テント内でパッキングを始める。
実は雨の中テント撤収は初めてなのである。
さらに言えば、雨の登山もほぼ経験がないのでござる。
こうなるが嫌で晴れの日だけを狙って山に来ていたがココに来てかましてきやがった。
しかし、事前準備を怠らない私は準備ができている。
以前までのザックだとキレイに順序よくパッキングしないと入らなかった荷物も、最後にテントをグシャって入れても入るようになっている。
そして、以前は裸で入れていた全ての荷物を個々にドライバックに分けてあるのだ。カメラからiPhoneからと全てザックに突っ込んで、レインカバーを被せて外に出る。
もちろん自身も完全防備で。
雨に濡れたグチョグチョのテントを90Lのゴミ袋に突っ込んで空気を抜いてザックの上部にドーーーン!
ものの数分で仕留めてやりましたよ。
はじめての雨の日テント撤収。
華麗な撤収裁きをYouTubeにあげたいくらいだ。
本当はこのまま稜線を行き、雲上の稜線を白峰三山を眺めながら行くという計画だったが、雲海どころの騒ぎではなかったので、まだ未踏だった広河原尾根へとエスケープルートをとり、早い時間に撤収する事とした。
小屋から広河原峠までは緩やかな樹林帯を30分
緩やかではあったが倒木が道を遮って歩きずらい。
現在、早川尾根は小屋が閉鎖したため手入れが全く行き届いていないのだ。
跨いだりくぐったりと時間を食われたように思ったが、25分で峠に着いた。
中々やるじゃないか。
下りで実力見せてやるぜ!
ココからバス停の広河原までは2時間半の下りだ。
しかし通ったことがなく、興味もなかったこの道の情報をまったくもっていなかった。
木が生い茂って一面ガスに覆われたココは、まんま鬼太郎の世界じゃないか!
かなり段差のある下りにでかい倒木がが無数にあり本当に難儀する。
雨でグショグショの道はヌカルんでいて、葉っぱで隠れた木の根に足を滑らせること5、6回。
手は泥だらけ、ストックも泥まみれになった。
そのあとは只々、一歩一歩気をつけながら無心で下った。
1時間程下ったところで沢が現れ人工的な堤防が出てきた。
そして地図通りつづら折りの下りに変わり、バス停へと繋がる林道に出た。
1人ガッツポーズをした。
達成感ではなく、何度も転んだり、滑ったけど大きな怪我なく無事下山できてよかったという安堵感だ。
そして、コースタイムは2時間半だったが、1時間半で下れた。
バス停まで林道を歩き、乗合いタクシーの方に時間を聴くと、次の時間まで2時間という。
ザック内を整理して着替えていると、北岳方面からの下山者が何組か降りてきた。
天候はどうだったか聞いてみると、一昨日から稜線歩きの為に入っているけどガスばかりで、ずっと中腹の御池小屋でテントを張って飲んでいたそうだ。
山って何なんだろうか?
時間使って、金も使って、体力使って、怖い思いして
やっと登ったけど、何の景色も見れないで
ただ黙々とひとり歩いて
僕自身は、目的としてたモノは得られなかったけど、すごく濃い時間であり『絶対忘れない思い出』になったのは間違いない。
しかしこの尾根をもう一度歩く事はないだろう。
ホントに嫌いな道だったから…
長い長い文章にお付き合いいただきありがとうございます。
ペコリーヌm(_ _)m
*下山の写真がないのは、全てザックにしまいこんでましたのでPS
広河原の待合で昭和の『岳人』(山雑誌です)があったので開いてみた