2024-11-20
- 札幌ひとり酒
何をもとめて酒場に来るのか
別に酔いたいわけじゃない
そこにある人の営みに 少し耳を傾ける時間にとても癒されるときがある
今夜はそんな時間をとても楽しめた
11月半ば、突然の寒波で急激に冷え込んだ道内には突然の雪予報。深夜目が覚めて窓から外を見るとアスファルトは白く染まっていた。
車を借りて移動する予定だった今日。『慣れない雪道を運転しなけりゃならないのか。』そんなことに朝から悩まされる始まりだった。
雪道を5時間ほど走って札幌に戻ってくると、運転に緊張したせいか疲れが出てきたので少し眠ることにした
夕方6時前。目を覚まして目的の酒場にむかう。
『鳥のきんちゃん』
観光通り狸小路より2本北にある通りの古いビルにそこはある
慣れない雪道を歩きたどり着いたのは、海外の方には目につかない。観光客にも目につかない。そんな場所が繁華街すすきのにあるのだ。もちろん僕の目にも入らない店だったが、以前札幌に住んでたお客さんが通っていたという場所を教えていただいたのだ。
スマホを片手にたどり着いたそのビルの二階。暖簾を確認し戸を開くと店主が座って準備をしてた。
「ひとりいいですか?」
「どうぞどうぞ!」
初客で端席に座るのも悪いかと思ったが構わないというので、焼き場の前 店内を見渡せる場所に座らせてもらった。
ありがたく一杯目は大将が注いでくれた。ひとりものが喜ぶ気づかいを知ってる。
お通しはしっかり炊いた煮物を餡かけにしたものだと。沁み込んだ出汁が手作りの味でとてもうまい。
いつからはじめたサービスかは知らないが他では見ないな。おちょこを選ぶのはあるけどな〜
昔は親が漬け物屋をやっていてずっとそれをお店で出してたんだそう。おふくろさんが亡くなる前に味を伝授してもらってからは自分でやってるんだとか。
煮付けと漬け物で飲んで一杯やりながらきんちゃんに訪れた理由を話す。札幌に赴任していた方が仕事帰りに楽しみにしてた拠り所だったらしいですよと。
「そーですか、そーですか!」とポテトサラダをサービスしてくれた。ベタベタするからマヨネーズは後のせしてます。だって
色々とこだわりがあっていい。聞くとコロナ以降お客さんはガクッと減り、常連だったお客さんたちも定年して行ったそうで。「みんな今は遅くまで飲んだりしないんでしょう。さっきの漬け物もほんとはもっと沢山つけてたんですよ。鮭の白菜漬けやら昆布〆やらね。みんなが食べてくれないと張り合いがなくてねぇ」
「変わってないな〜。昔よく来てたんだよ」同席女性ははじめてらしく「すごいいい雰囲気〜」だとまわりをキョロキョロ。
相当居心地がよかったんだろうなぁ
コレだろ。甘いのが欲しかったんだよ
煙草もいまは吸わなくなったが名刺がわりにマッチを拝借してくると、裏に言葉が書いてあった。
『サッポロの広い都心の真ん中で 小さな店の、小さな男、自立の道を志し 男一匹どこまでも五尺二寸の体に賭けて、末は札幌、北海道 いやいや日本で一番のやきとり屋を作って見せると意気込んで、小さな炎をもやしつつ、やきとりバカが歩み出す。』
日本一かはわからないが、埼玉のちいさな理容室にまでその声が届いてる
それはとてもすごいことで、それを聞いた一人の男が訪れて こうやって言葉に残そうと書いている。それをまた誰かが見て足を運んでくれるかもしれない。
小さな店は小さな店なりに一生懸命やってる。ながく続けていけるっていうのは人の繋がりなくしてありえないのだ。
店にかけてあった言葉のようにいつも心で『おかげさん』
とても色々勉強になりました。