2020-8-24
- 北アルプス ~ まっすぐな少年と、ねじまがった中年のはなし ~
灯りのない真っ暗な麓の駐車場
無数の蛾に車内を襲撃される
てんやわんやの午前二時
そんなところからこの物語ははじまる三連休なので久しぶりに北アルプスに行こうと決めていた。
北アルプスは遠い。
いつもの南アルプスより100km遠い、250kmもあり、仕事終わりには中々応えるのだ
22時には埼玉を出発したが、着いたのは午前二時。
アドレナリンがでるほどのドライブだった
山に囲まれた麓の駐車場だが、登山最盛期の為ほぼ満車状態。
もう寝ているのか、まだ山の中の人たちなのか?一切灯りはなく静寂に包まれていた。
明日は五時に起きて登り始める
わたしは寝る準備をするために外に出てハッチバックを開けた。
いそいそと準備をしているとき、車内に気配を感じふと目線をあげると無数の蛾が飛び回っていた…
なんてこった。
すべてのドアを閉め、少しずつ窓に追いやり数匹は追い出せたが埒があかない
わたしは考えるのをやめ、そのまま蛾とともに寝ることを決意した。AM4:30
JAYWALKの何も言えなくて夏…で目覚める
わ~たしにはスタートだったの。あなたにはゴールでも~
さあ、こちらもスタートしようと準備をはじめる
準備をしていると、無数の蛾の死骸が車内に落ちていた…
それを摘まんで外に投げる。
昔はこんなこと絶対できなかった。山が無の心を育ててくれたのだ。今回の目的は、絶景の剱岳を見るロケーション
冷池のテント場に一泊することだ。
淡々と尾根を登る
とてもよく整備された登山道。さすが北アルプス屈指の登山ルート。
どこぞのアルプスでは見たこともない広い道だ。
少しずつ陽も登ってきたが太陽は雲が隠し、乗越からおりてくる風が汗をさらう
清々しい。
振り返れば黒部ダムを囲う名峰がそびえる。
まだまだ稜線にまで程遠い、登り出しからダイナミックな風景。
これが北アルプスなのか。
4時間ほど歩いたころ樹林帯が開け、草原が広がっていた。
上を見れば山荘が
中継地 種池山荘である
重たいザックをおろし、しばしの休息。重い腰をあげて目的地を目指す。
この先は北アルプス北部を眺めながら歩く、絵にかいたような縦走路だん~~~。
しかし~~
どこまで行くのかな~~~?「お父さん。あそこはなんてところなの?」
後ろで熟女の声が聞こえる
「あれは冷池だよ」あれだったーーー!?
あれが目的地じゃったかーー!!
しかし、わたしは男の子なのだ。
剱岳を眼前に!最高の展望をロケーションでテント泊をするんだもん!ほどなくして目的地に着く
衛生上、現在は濾過した雨水は売れないので、いろはす2Lを購入。
料金は1000円(ヘリでの輸送費、自分で2kgをもって上がる苦労を考えたら屁でもない。本当にありがたい事だ)30分ほどの間、雲間に太陽が入り幻惑させていたが、そのまま濃い雲に包まれてしまった。
鹿島槍まで約二時間。
ご来光を頂上でみたいとも思ったが、あたりはガスの中。
気分がのらないので、このままテント場で日の出を迎える5時前。
太陽が湧き出す雲の中、遠くにかがやいている日の出はずっと雲の中だったが、陽が昇れば東の眼下はすべて雲海に包まれていた。
下山に五時間
街に着いてから、洗濯やテントを乾かしたいので昼過ぎには着きたい
朝7時。すべてを撤収し帰路につくことにした。午前中。たくさんの人が昇ってくる。
その中に子連れの親子がいた。
小学生の中学年くらいだろうか?
お父さんは山が好きそうだ。すれ違いざま「がんばってね~」と少年に声をかける
少年は言う
「もう鹿島槍は行ったんですか!」
キラキラした少年の目はこちらを見つめる
わたしは
「鹿島槍は行かないで、テント場で終わりにしたんだよ~」と
「ふ~~ん」
その瞬間、少年の目は死んでいた
少年の期待や希望を寄せる眼差しは、一瞬にして消え去ったのだ。お父さんと一緒に行こうと約束した鹿島槍。
友達に今度登るんだ!と誇らしげに言った鹿島槍。
そんな自らの目標であり希望の鹿島槍のルートから降りてきて、ましてこんな大きなザックの山男が鹿島槍を登っていない?
いやいや、信じられない。とんでもないポンコツ野郎に話しかけられちゃったよ。
ダサさがうつる、父さん早く行こう。カッコ悪い大人っているんだね。夢見る少年はこんなことを考えたのであろう。
あのな~
大人をなめるんじゃないよ、少年。
糞虫でもみるような目で見下しやがって!
その小さいザックには何が詰まっているんだい?
夢が詰まってたって飯は食えねーんだよ
おまえさんにはわからないかも知れないが、人には生き方ってもんがあるんだよ
てっぺんだけを見つめるも人生
横に逸れるも人生
逆に下るも人生なんだよ
悔いていなければすべてが正解なんだよ
本人が決めた道は、本人の責任で歩いてんだよ。
それが大人なんだよ。
まっすぐだけを見つめられるのは助けてくれる人がいるからなんだよ
父ちゃんのデカいザックを背負った背中を見ろ
誰かに支えられて成長してるってことに、いつか気づくんだぞ!
なあ、少年よ!危なく少年の絶望という眼差しに、心が打ちひしがれてしまいそうだったが、心の中で逆にディスり返すことによって正気を保つことができた。
いや~。あぶないぶない。
くわばらくわばら・・・のこり2時間。
たんたんと脳内でディスりながら、猛暑で無風の下り坂。頬をつたうのは涙じゃない…
ちょいと汗が目に沁みただけさ。
まっすぐだけを見れなくなったのはいつからだ
疑うことを知ったのはいつからだ
生きるというのは苦悩の連続だ
その時間を山は与えてくれるこれからも煩悩100%で突っ走っぞ!
おわり
久しぶりに北アルプスに登って
北アルプスは華やかだ
沢山の名峰がいつも傍にいる感じ
沢山の人が来るから、実際に賑やかだ
北アルプスも広いから、様々な場所があるんだろうけど。
もうちょっと色々知るまでは
緑と水が豊かで知れた山々が並び、そっとひとりで歩く登山道。
そんな南アルプスに心を寄せてしまう。